• 松永哲典

くまチャレビト

くまもと・まち魅力向上協議会 会長

松永哲典

Profile

熊本県熊本市出身。高校卒業後4年間、イタリアの日本料理店で働く。現在は下通繁栄会二番街理事を務め、熊本の中心市街地を持続可能な街にするため活動を行う。

インタビュー✴︎2021/04/07更新

生い立ち・経歴 ~熊本→イタリア→熊本~

 熊本で生まれて熊本で育ち、高校卒業した後はすぐにイタリアのミラノにあるレストラン大阪という日本料理屋さんで4年間カメリエーレをやっていました。日本語でいうウエイターですね。それから熊本に帰ってきて、知り合いの店でお手伝いや仕事をしながら、もともと家族経営している会社のビルを経営するようになって。ビルも組合に入っているので、その関係で下通繁栄会の青年会の活動をするようになりました。

 

『くまもと・まち魅力向上協議会』の発足

2016年熊本地震の後には下通り、上通り、新市街の組合が一緒になり、まち魅力向上協議会になりました。この時期に、キリングループが阿蘇や熊本市全体に新しく継続できる企画を募集し、そこに日本財団さんを通して資金補助をするという企画をされていて。その一つとして熊本城を含めた中心市街地にも大きな支援をしていただきました。

もともと上通りも下通りも新市街も繋がり自体はあったんですけど、こうやってエリア的に取り組むってことは、商店街レベルでしかやってなかったので、新しい取り組みとなりました。20~30年続くような新しい企画を考えようと、一応若手に入る30代がまちの30年後を考えて動き出したのがまち魅力向上協議会です。30年後を見据えた取り組みとしてはお城の復興とともに、自分たちも進化していけるような、継続できるまちづくりを構想しました。

 

『そこで行なったイベントが「まちなか+ONE」』

障がいのある子供など、普段はあまり街なかに行きづらい人でも気軽に来てもらえるように、2018年6月の1ヶ月間を誰でも行きやすいまちづくり月間として設定。3つのイベントを開催しました。

 

「1つ目 栗栖良依さんの講演会」

東京2020オリンピック開会式・閉会式4式典総合プランニングチームメンバーにも選出された、栗栖良依さんの講演会です。栗栖さんは32歳の時に右足に障害を抱えられましたが、社会復帰を果たしNPO団体を立ち上げた経験を持ちます。「障がいのある方にとって何が、どういう形だと生活しやすい環境なのか」をテーマに講演していただきました。実際障がいのある人と一言で言っても、人によってレベルが違いますし部分も違います。一概に言えないため、ハード面の補正はとても難しいそうです。そうではなく、商店主の人たちが声をかけてお手伝いをする、ソフト面でのサポートの方が“通えるまち”になることを教えて頂きました。「普段商店街にいる人がちょこっと手を差し伸べる方が、大事だしありがたい」という言葉を講演会でいただいて、そんな環境の作り方の大切さを自分も学びましたし、みんなに知ってもらう必要があると感じました。

 

「2つ目 作品制作や音楽イベントの開催」

熊本にある障がい者施設の方に、まちなかで実際に作品を作ってもらうイベントを行いました。みなさんが作る作品は繊細ですごく素敵です。でも人と会話するのが得意ではなく、周辺の人にしか見せられてなかったのを、誰でもいるようなアーケードの中で作ってもらいました。中心市街地の方も見る機会がありませんでしたし、作る方々もたくさん人がいるところで見てもらうことが初めてだったようです。「すごいね!という声がすごく嬉しくて、もっと作りたいと思った」と言って貰えたので、このイベントをやる意味があったなと思いました。

他にもotto&orabuという鹿児島の障害者施設〈しょうぶ学園〉のパーカッショングループに来ていただいたりもしましたね。

講演会やイベントを開催する中で、これまでは街なかに行きづらかった人たちが、今後は行きやすくなるように人との関係づくりを図り、だれもが訪れやすいまちづくりができたのではないかと思っています。

「3つ目 空中図書館まちピチュ」

「空中図書館まちピチュ」をCOCOSAの5階で開催したことです。これは移動できる図書館になっていて、棚は子供が本を取りやすい高さで作られており、絵本など約160冊が並んでいます。まちなかにはゆっくり休憩するスペースがあまりなかったので企画したのですが、みなさん腰掛けられたりと、ゆっくり過ごされていました。置いている本は全て熊本市立図書館のリサイクル本を提供いただいているので、気に入った本があれば持ち帰れます。

他にも継続して新たな中心市街地の情報発信サイトとして『kumamotopics』を立ち上げて、今でも継続して行なっています。この時新規事業として立ち上げたのが『まちなか+ONE』『まちピチュ』『kumamotopics』の3つでした。

まち魅力向上協議会の新たな動き

 

中心市街地は無差別集客なんです。おじいちゃんおばあちゃんから赤ちゃんまでと年齢の幅が広いし、それに全部対応しなければいけない。はっきりとターゲットはないにしろ、全ての人に来ていただける場所ではあると思っています。しかし今、まち魅力向上協議会は一つ先に進もうということで、法人化に向けて動き出しています。そこで特にこれから街に来て欲しいターゲットを考えてみる事にしました。

10年後、20年後の街を作り支えていく人にまちの良さを知ってもらわなければいけないと思い、ターゲットを0歳~12歳に設定しました。昔は買い物をするならば中心市街地であるとみんなが思っていたため、何もせずとも多くの人が来ていました。しかし今は大型ショッピングモールが出来て、若い人たちがそちらに流れてしまう傾向にあります。中心市街地に足を運ぶきっかけが減っている中、ちょっとしたきっかけづくりをしていかなければなりません。

ターゲットが街にあまり来ていない現状の課題は、お互いの情報発信と受信の関係が合っていないことだと思います。ターゲットにあった情報の発信ができていない。発信はしているけれど届いていないということは非常にもったいないことです。

今後は私たちでも知らない場所や、歴史的なモノ、新しく生まれ変わっていくモノの魅力を引き出すなど、情報発信に力を入れます。自分たちにも更にスキルをつけるとともに、若い人の視点を取り入れるため学生さんの力を借りながら活動を進めていければと考えています。