• 荒木 真吾

くまチャレビト

株式会社ディカーナ(クリスマスマーケット熊本主催)

荒木 真吾

Profile

1982年、南関町生まれ。イベントの企画・運営、イベント機材のレンタル、ライブ配信事業などを行う株式会社ディカーナ代表取締役。大学を卒業後、東京の一部上場メーカーへ就職。2009年に地元熊本へUターンし起業。「熊本暮らし人まつり みずあかり」の運営事務局長を拝命。2018年には「クリスマスマーケット熊本」を立上げ、副実行委員長・事務局長として熊本の地域づくりイベントの第一線で活躍中。

「クリスマスマーケット熊本(クリクマ)」とは

(写真:クリスマスマーケット熊本2018の様子)

 

2018年より、毎年12月に熊本中心地で開催されている屋外イベント。

ドイツで誕生し、ヨーロッパ各国で親しまれているクリスマスマーケット同様、街の広場に置かれたクリスマスツリーの周りをヒュッテと呼ばれる木製の屋台が囲む。

2019年には、1週間で21万人の来場者を記録。熊本の冬の風物詩として、定着しつつある。

 

interview

学生時代のイベント経験が、ビジネスに

(写真:当時19歳で主催したキャンプイベントの集合写真)

 

荒木さんは高校時代から大学時代にかけて、複数のまちづくりイベント運営に携わりました。

手がけてきたイベントは、トークライブや講演会といった真面目なものから、100人以上を集めたキャンプイベント、熊本の繁華街での若者の表現祭り、ミレニアムや21世紀を迎えるカウントダウンイベントまで多岐にわたります。その中で必須アイテムだったのが、スタッフ間のコミュニケーションツールである「インカム・トランシーバー(無線機)」。それらはイベントの思い出とともに、就職で上京したあとも手元に残してあったといいます。

あるとき、倉庫で眠る10数台の無線機を貸し出すことを思いつきます。これが、現在の「レンタル無線機ドットコム」のはじまりでした。その需要は想像以上で、ひとりで事業をやるには限界を感じるほど。

創業当時は、電話対応や機材のメンテナンス、配送業務をアウトソーシングして事業を回していました。お客様の7割以上が東京や神奈川など首都圏のお客様。熊本にいながら、東京をはじめとする大都市圏のお客様へサービスを提供できる喜びを感じたそうです。

荒木さんの強みは、複数のイベントを企画運営してきた経験から、お客様により具体的な現場感あるアドバイスができること。機材レンタルのほかイベントの企画・運営、さらには最近では、映像ライブ配信サービスも展開されています。

 

「熊本では無理だ」と諦めつつも、1年後に開催できたクリクマ。

(写真:クリスマスマーケット熊本2020の様子)

 

26歳で熊本へUターンし起業。

そこで再び、まちづくりのイベントを立ち上げます。その一つが「マチナカレッジ」。熊本市街にあるさまざまな店舗の空き時間(閑散時間帯)や空きテナントを活用し、カルチャーやビジネスを学ぶ場にするという取り組みです。

この市民大学での仲間との出会いが、後のクリクマ開催の主力メンバーなっていきました。

「熊本でもクリスマスマーケットをやろう!」そう最初に口にしたのは、「マチナカレッジ」を一緒に立ち上げ、活動をしていた、竹あかり演出集団CHIKAKENの池田親生氏。彼の誘いに、最初は戸惑いながらも、荒木さんは奮起。2017年冬、ロールモデルである「福岡クリスマスマーケット」を準備期間中から視察します。

しかし、あまりのクオリティの高さに圧倒されてしまったのでした。

「莫大な費用がかかることは一目瞭然。この小屋をどうやってつくるのか、上質なあたたかい雰囲気をどうやって演出するのか……熊本では無理じゃん。それが最初の感想でした」

それでも、福岡クリスマスマーケット実行委員長の後押しや各所からの応援によって、本格的に始動。2018年の第1回目は5日間で9万人、2019年は7日間で21万の来場を記録し、今や熊本の冬を彩る欠かせないイベントとなっています。

 

(写真:クリスマスマーケット熊本のヒュッテ)

 

前途多難な開催準備の中でも、最大の課題だったのがヒュッテ(木造店舗)だったそう。

「せっかく作るのであれば熊本県産の木材を使おうと、自分たちで手作りすることにしました」。
クリスマスマーケットの会場設営には、仮設建築物の許可、消防許可、保健所許可などを得なければなりません。それらをクリアするために、ヒュッテ設計製造・会場全体のレイアウト設計・イベントコーディネート、更にプロジェクトマネージャーまで担ったのが、荒木さん。これまでの熊本に無いイベント空間を創り上げるためにも、業者に外注するのではなく、自分たちで作り込む必要がありました。荒木さんは、これを実現させるために、仮設建築物の許認可申請や会場施工を直営するため「二級建築士事務所」と「建設業許可」を自社で取得してしまうほど。華やかなイベントの裏には見えない努力がたくさんあり、荒木さんはまさに縁の下の力持ちなのです。

「多くの企業から支援いただき2年目3年目と続けられたのは、(諸手続きを)真面目にやったから。マネジメント関係は私に任せてもらっていますが、メンバーそれぞれが得意分野でクリクマを支えています。実行委員は、物好きな変人が集まったチームです(笑)」

 

 

大切にしているのは、ホンモノを感じられること

(写真:第 1 回目開催直前の役員会議の様子・2018 年 11 月)

 

荒木さんは「クリスマスマーケット熊本」という商標も取得しました。

それは、イベントの信念を守るため。

クリクマは理念を運営メンバーみんなで共有し、クレドにならって動いています。

ヒュッテに出店できる飲食店の審査条件は高く、誰でも出店できるというわけではありません。主催者役員が必ず飲食店のオーナーと面会し、試食を実施、その後意思決定機関である役員会で6人いる役員の全員の賛成が無ければ出店がかないません。クリクマのイベントの趣旨・考え方にマッチするお店のみを厳選し、熊本の、日本の、世界のホンモノを感じられるコンテンツづくりを目指しています。

また「優しいクリスマス村づくり」を実現すべく、SDGsにも取り組んでいます。

10年先へ続く冬の風物詩。

これが、クリクマの目指す姿なのです。

 

 

みんな、ワクワクを求めている

(PHOTO: Dai Hashimoto)

 

直前まで悩まれた2020年の開催でしたが、十分な感染対策の上で実施され、結果的に15日間で5万人が訪れました。多くの人の笑顔を目の当たりにし、みんながこれまでのようなイベントやエンターテイメントを求めていることを実感したといいます。

 

「入学式や卒業式から東京オリンピックまであらゆるイベントが中止になり、2020年は失われる年だったと思います。だからこそ1年の最後に、思い出を作ってもらいたい。2021年への希望の灯火をつくりたい。そんな想いで開催しました。今回ひしひしと感じたのは、みんな“ワクワク”を求めていること。無事に終えられたので、開催して良かったと心から思います」

 

 

クリクマを、世界に通用するイベントに

 

荒木さんは、クリクマを通して熊本のイベントやお祭りのクオリティを上げていきたいと話します。

「ヒュッテも装飾物もホンモノなので、持続的に使えます。だからこそ、何を足していくかが重要なのです。毎年同じものが並んでいても、みんな飽きてしまう。お客さんが驚く新しいコンテンツを生み出していくことで、イベントのクオリティが上がっていくと考えます。たくさんの人が誇りを持って携わっている。企業もその価値を感じて頂き、ご協賛いただいている。クリクマがひとつの文化として、熊本の街で認知され、自分の街をもっと好きになれる・・・。そんな、楽しい熊本にしていけたらと思います」。